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事業承継 情報ギャラリー

インタビュー vol.1 〜オーナー社長の事業承継と次世代承継に向けての取組み(前編)〜

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執筆者 ばとんたっちbiz編集部
先代からの事業継承

創業84周年を迎え、印刷の進化の最先端を走る東洋美術印刷株式会社。オーナー社長が義理のお父様から会社を引き継いだご経験や次世代への承継についてお話いただきました。
前編・後編の2回に分けて、お届けします。

記事のポイント

● 次世代に承継するための株式の整理の重要性(持株会社の活用)
● 経営における『守っていくもの』と『変えていくもの』会社の成長に必要な新規事業への取組や体制について
● 新規事業プロジェクト
● 持株会社を活用した事業承継
目次
  • 1. 会社を承継した経緯
  • 2. 承継後の取組み
  • 3. 新規プロジェクト
  • 4. 事業承継における株式問題(持株会社の活用)



東洋美術印刷株式会社
東洋美術印刷株式会社

・所在地:東京都千代田区
・概要:各種印刷事業、デジタルメディア事業、コンテンツサービス事業など
・ホームページ: https://www.toyobijutsu-prt.co.jp/

1935年(昭和10年)東洋美術印刷所として創業。品質にこだわった美術印刷を中心に発展し1948年(昭和48年)東洋美術印刷株式会社設立。

山本久喜社長
山本久喜社長

1985年 冨士ゼロックス株式会社入社
1991年 東洋美術印刷株式会社入社
2003年より現在まで 同社代表取締役社長


インタビュアーエスネットワークス株式会社山田惇依
インタビュアー 株式会社エスネットワークス 山田惇依

株式会社エスネットワークス グローカル事業本部 事業承継部
公認会計士、公認不正検査士、日本ファミリービジネスアドバイザー協会フェロー。

掲載日:2019年6月21日

1.会社を承継した経緯

山田:
社長が先代から会社を承継した時の経緯を教えてください。


社長:
妻が創業オーナーの先代の3人姉妹の長女で、前の会社で一緒に働いていて社内結婚しました。結婚後は妻の会社について意識は特になく、そのまま同じ会社で暫く働いていたのですが、あるとき先代からオファーがありました。全然違う世界だったのですが、サラリーマンよりも自分で会社をやってみた方が面白いと思い、会社に入る決断をしました。


山田:
社長は平成3年に入社、平成15年に社長に就任され、先代は会長となられました。社長就任後、3年間の会長との併走期間においては、どのような役割分担をされていたのでしょうか?


社長:
業界の繋がりや付き合いみたいなものは会長がやっていましたが、事業は、先代が会長になってからはある程度任せてもらっていました。社長になるまでは、役員会でぶつかったり意見を言い合ったこともありましたね。

2.承継後の取組み

山田:
前職と今の会社は、業界的には似ていたのですか?


社長:
前職は事務機メーカーで、当初、自分の意識では別の世界に入ったつもりでした。もともと当社は印刷を中心に行う会社だったのですが、私が入ってから、デザインもやることに決めまして、そこを強化したところ、色々な企画の話がお客さまにご提案できるようになり色々と幅が広がりましたね。自分で新しいトライができたので、入社する前に思っていたよりもずっと面白かったです。


山田:
社長が新たにデザイン事業を始めることで、新しい風が社内に入ったのですね。
従業員の方々が新しいものをスムーズに受け入れてくれましたか?


社長:
先代も経営陣も従業員も真面目で、ややこしいことは無かったのですが、なかなか社風としては簡単には変わりませんでした。しかし、徐々に皆がデザインを武器と考えて、仕事を取ってくるようになっていきました。そこから社風というより、会社の形といいますか、ビジネスのドメインもちょっとずつ変わっていきましたね。
もともと当社は社名の通り、創業時から、美しく鮮明な印刷を必要とする美術印刷をベースに成長してきた会社です。したがって、単に技術を駆使して印刷するだけではなくて、付加価値の高い何か、目に見えない印刷を作るためのサービスというところで、お客様に寄り添ったいいサービスが提供できていたんです。それに加えて、デザイン表現を武器に、よりお客様の業務課題を共有し、高いレベルのご提案ができるようになりました。
また、創業時からある保険会社のお客さまとの取引が密で、知らず知らずのうちに保険会社に合った設備やノウハウが蓄積されていました。そういった強みを生かそうと、全ての保険会社に営業し、今では数十社に及ぶお付き合いに広がりました。
特定の業種に絞った部分と、デザイン企画・提案力の強さの部分が、生き残れている要因と思ってます。


山本久喜社長
山田:
承継時に、先代が「守ってきたもの」と、「変えていくもの」について考えられたと思うのですが、デザイン事業が 「変えていくもの」とすると、一方で「守ってきたもの」は何でしょうか?


社長:
創業時から美術印刷という看板がついているので、そこは大切にしようと守ってきました。ただし、それは専門的な美術書関係をやる会社という意味ではなくて、美術印刷という品質にこだわるところを大切にしようとしてきたのです。
つまり、創業時とは環境も変わってきていますので、「高級な品質の高いサービスを提供する」という創業者の思いを大事にしながらリブランディングをしたのです。あともう一つは、やっぱり従業員が非常に真面目でお客様思いという社風ですね。
先輩社員から、過剰といえるくらいのお客様思いのサービスが脈々と伝わっています。教育ということではなく、 伝承として当社が元々持っているもの、それは大事にしたいと思っています。
ただ、やはり根が真面目な会社なもので、保守的な部分があって守るところばかりに目が行きがちなので、新しいチャレンジも必要です。当社は、古来から日本で受け継がれてきた伝統文様を未来へ伝えるために「文様百趣」として新たにデザインし、データ化する新たな試みを数年前から行ってます。最近ですと、動画やVR(仮想現実)といった世界に、「チャレンジしよう!」と大きく声をかけたり、「みんなこっち行くぞ!」と宣言したりして、若干 無理やりにでも少しずつ変えていこうと思っています。当社は、良い意味で保守的で新しいモノに飛びつく会社ではありませんが、新しいことでもお客さまに対してメリットがあるなというものには気が付ける会社です。そこを営業なりに見極め、提案していけるところが、守るべき良いところと、変えていくところを、両方マッチできている感じでしょうか。

3.新規プロジェクト

山田:
新しい事業というのは、考えて推進していくのは難しいものですよね。
当社がサポートさせて頂いている会社においては、次の世代に経営を自分達の事として考えてもらうため、 『MIRAI会議』を開催しています。『MIRAI会議』では、若手層を中心に社員が選抜され、話し合いを重ね、最終的に役員に自社のあるべき姿をプレゼンテーションをします。そこで話し合ってほしいテーマを社長に事前にお聞きすると、「新しい事業を考えてほしい」というご要望がよく出ます。御社で新しい事業を考える時は、何か仕組化されていることはございますか?


社長:
これまでは、今ある技術や事例を上手くうちの中に取り入れていくことで、業界の先陣を切って新しいトライをしてきました。現在は『新規事業推進部』という部署を作り、我々の持っている強みを活用して新しい視点でお客様にソリューションを提供していて、より強化しようと思っています。ただ、その先の本当に全く新しい事業ということになると、私一人や目の前のお客様のことだけを考える営業マンでは限界があるので、新規事業を考えるプロジェクトチームの立ち上げも考えています。そこにはもう、私も入らず、次の世代に絡んでもらおうかと思っています。
実は社内人材が中心ですが、社外にいるうちの息子も少し絡ませたりしているのです。


山田:
社外というのは、息子さんは、関連業界の方なのですか?


社長:
いえ、全然違う業界です。デザイン思考というビジネスにおけるソリューションを導くアプローチ手法があるのですが、それが専門分野です。当社の文様の活用もその手法の事例の一つです。(目の前のボトルを手に取り)これは、当社のデザイナーが考えたのですが、ボトルに文様のデザインをしています。他にも壁紙や、エレベーターの内装、カレンダー、こういうものを製品化にして。今までは、BtoBのお客さまが多いのですが、そちらも大切にしながらBtoCのビジネスも考えていこうと、このプロジェクトチームを立ち上げました。


山田:
BtoCのビジネスとは、どういうものをイメージされているのですか?


社長:
文様を生かした、品のいい趣味の文房具や和道具といった小道具などです。実はこの文様には一つ一つに意味がございます。例えば、波だったら「平和」とか。文様の意味を組み合わせて新しい商品を今考えています。


カレンダー

4.事業承継における株式問題(持株会社の活用)

山田:
社長が次の代に事業を承継するまでの間に、成し遂げたいことを教えてください。例えば、先代からの承継時には上手くいかなかったから、次は改善したい事などはございますか?


社長:
先代からの承継という部分では、株式の承継には課題がありました。
先代は2代目だったのですが、株式が複数の株主に分散していたのです。
そこがクリアになってからは、事業の承継部分では大きな問題は特にありませんでした。
この業界はご存知のように、どちらかというと成熟産業で厳しい業況が続いていますので、そこは誰がやっても苦労したと思います。苦労しながらも、会社の運営という意味では先代からの承継というところではそんなに大きな壁はなかったですね。


山田:
では、株式の承継が課題としては一番大きかったのですね。
先代からの承継時にどのような対策をとられたのでしょうか?


社長:
分散していた株式を集める為に持株会社を作り、持株会社に直系が保有する株式以外を集約しました。決して他の株主と揉めていた訳ではなく、良好な関係でしたが、今後のスムーズな経営や次の承継の為にです。
持株会社の活用により株式の承継の課題がクリアになったので、安心して経営にタッチできるようになりました。 次世代の後継者が余計な事を考えずに事業に専念するために、オーナーとして株式の整理はちゃんとしないといけないと思います。



Point <持株会社の活用例やメリット>


● 持株会社/資産管理会社を設立、事業と資産活用の両輪でファミリーの資産を育てる
● 後継者候補が複数いる場合、事業を分けて各々が責任を持てる環境を作る
● 後継者の議決権を確保し、後継者の経営環境を安定化
● 自社株式の売却により、将来の相続における納税資金を確保
● 将来の株価上昇を抑制し、次世代の税負担を軽減


オーナーが持株会社の株主になる方法 オーナーが持株会社の株主になる方法
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ばとんたっちbiz編集部
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