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経営承継・事業承継の進め方 同族企業の永続的な発展のために必要な視点

山田惇依氏
執筆者 山田惇依
この記事は株式会社エスネットワークスが運営する、
NEXT CFO の記事を転載しております。
経営承継・事業承継の進め方 同族企業の永続的な発展のために必要な視点
同族企業は、家族ならではの強さを持っている反面、一筋縄ではいかない様々な人間模様が交錯する複雑なシステムを築いています。
今回は、そんな同族企業が永続していくためのポイントをお伝えします。

目次
  • 1. 中小企業の3分の1が廃業予定。12人に1人が失業する時代をどう生き延びますか?
  • 2. 社長が担っているのは会社の歴史のわずか一瞬。これから先も永続するために、何を守り、何を変えますか。
  • 3. ベンチャー企業への投資やファミリーアントレプレナーの創出を視野に
  • 4. 最後に

1. 中小企業の3分の1が廃業予定。12人に1人が失業する時代をどう生き延びますか?

日本は「長寿企業大国」と言われていますが、実際どのくらいの「大国」なのか、 光産業創成大学院大学の後藤俊夫教授による集計(2010年10月)によると、創業から200年以上経過した企業数は

1位 日本 3,886社
2位 ドイツ 1,850社
3位 イギリス 467社
4位 フランス 376社
5位 オーストリア 302社

創業から200年以上経過した企業の数


日本は断トツの1位です。世界の200年超の企業数は8,000~9,000社あると言われている中で、日本はそのうち約半数を占めています。
さらに、創業100年以上の老舗企業の96%は、従業員300人未満の中小企業なのです。
そんな日本を支える中小企業ですが、約3分の1以上の企業が廃業予定としているのが現状です。

廃業予定企業が本当に廃業したら、日本の雇用が650万人喪失すると言われています。
内閣府によれば、生産年齢人口(15歳~64歳)は2016年10月1日現在で7,656万人。
ざっと12人に1人が失業する計算になります

しかし、中小企業庁の調べでは、廃業予定企業の約3割の経営者が現状の業績の維持は可能、事業の将来性では約4割の経営者が前向きと回答しています。

今後10年間の事業の将来性
(出典:平成28年12月 中小企業庁  事業承継ガイドライン)


では、廃業しないためにはどういった手立てを打てばよいのでしょうか。

2. 社長が担っているのは会社の歴史のわずか一瞬。これから先も永続するために、何を守り、何を変えますか。

日本には、世界最古と言われている企業があります。 寺社建築の金剛組です。
578年創業、今年1,440年目を迎えます。なぜ1,440年も続いたのでしょうか。
金剛組は、もともと聖徳太子の命を受け日本最初の官寺である四天王寺(大阪市四天王寺区)の建設を最後まで完成させたのが 始まりです。
その後、四天王寺お抱えの宮大工として安定した事業を行ってきましたが、多くの試練がふりかかります。

1868年四天王寺からの俸禄が切れる。
1929年昭和恐慌による経営難を受け37代当主の自殺。 その後37代当主の妻が38代女棟梁へ就任・・・

2005年に髙松コンストラクショングループの子会社となり経営は金剛家から離れることとなりましたが、当時の39代当主は相談役となり、120人近い専属宮大工を従えることで伝統ある技術を確かに繋いでいます。

試練を乗り越えた背景には、古来の伝統工法を進化させながら 最新技術を取り入れ本業の強化を図ったこと、そして金剛家の継続への執念がありました。
長く存続する企業は、変えてはいけないものと変えてもいいものを見極める力が備わっていることは よく言われていますが、さらにここで注目したいのが、38代女棟梁就任による金剛家一族への影響です。

同族企業の世代交代、経営承継のプロセスにおいては、①家族の承継、②経営の承継、③資産の承継の3つの切り口から会社を捉えることが重要です。

そして、会社の未来を考えるときは、この3つの切り口ごとに、10年後、20年後、30年後にそれぞれどのような姿になっていたいのかを考えます。
そして、こういったことを社長だけでなく、将来を担っていく次世代幹部候補者や、会社に関与している親族、親族以外の幹部の方も巻き込んで考え議論し、3つの切り口の将来像についての目線を合わせ同じ方向を向いていくことが、同族企業の永続に繋がっていきます。

金剛組の創業1,440年は代表的な例ですが、長く続く企業にとって、誰かが社長を担っている30-40年はほんの一瞬です。
その一瞬を繋げていくため、社長は先代社長から受け継いだ財産をしっかりと次世代に引き継ぐ責任を負っています。
皆様は、その責任を果たしていますか?

「承継」と聞くと、最後の手仕舞い、自分はまだ元気だから先のこと…など、「老い」や「衰え」と結び付けて考えられることが多いのではないかと思います。

本来、経営承継とは社長に就任した瞬間からこういったことを考えなければならないプロセスです。
ある世代からある世代に代が代わる、社長を交代したならば、その瞬間から次の世代への承継プロセスがスタートするのです。

3. ベンチャー企業への投資やファミリーアントレプレナーの創出を視野に

金剛組の例では、1,440年続いている秘訣の1つとして、伝統工法を進化させながら最新技術を取り入れることの大切さをお伝えしました。

最新技術を取り入れる方法の1つとして、近年ベンチャー企業への投資が提言されています。
同族経営の会社がベンチャーキャピタルを巻き込みながら、自社がこれから取り組みたい重点分野の最先端のアイディアや技術を持ちながらも未だ利益が出ていないベンチャー企業を見つけ、投資をする仕組みです。
海外企業にも目を向ければ、グローバル化するきっかけにもなります。

さらに、同族企業の中には、「ファミリーアントレプレナー」と呼ばれる、世代交代を機に事業モデルやビジネス領域を大きく転換させる後継者がいます。
彼らの共通点は、営業能力や技術力が長けているといったことではなく、

①自社の中核技術を見極めていることと、 ②誰かのせいにすることなく自己責任で物事を達成する意思があること の2点です。

大ヒット商品鋳物ホーロー鍋「バーミキュラ」を開発された名古屋の愛知ドビー株式会社。1936年に名古屋で創業した老舗鋳造メーカーです。もともとは船舶やクレーン車に使われる精密部品を製造している下請けメーカーでした。倒産寸前だった下請け工場は鍋メーカーへと生まれ変わりました。

守ったものは、鉄を溶かして形を作る「鋳造工程」と鋳造で完成したものを削る「精密加工工程」の両方をもつという強み。
会社存続への強い執念をもってあらゆる国内外の業界動向や事例を調べ、「鋳物は非常に調理に適しておりステンレス製の鍋より味は美味しいにも関わらず、フタと本体の密閉性が悪く無水調理できないため製品の完成度の低さから『世界最高の鍋』とは評価されていない」という点に気がつきます。
そこで自社の強みである「鋳造」と「精密加工」という技術を使って、フタと本体が密閉される無水調理可能な鋳物ホーロー鍋の開発に至りました。

3代目の現社長兄弟は、中核技術を見極め、かつ存続への強い執念が事業転換を成功に導きました。
会社が永続的に成長していくためには、豊富な事業経験を持つファミリーアントレプレナーを育てることも重要な課題の1つです。

4. 最後に

同族企業には、家族ならではの長期的に発展し続けられる強さを持っている反面、一筋縄ではいかない様々な人間模様が交錯する複雑なシステムを築いています。それでも、会社を潰したくない、従業員は守らなければならないという思いは共通なはずです。
生きる時代が違えば考えも違って当然ということを互いに認め合い、世代交代に向けて3つの視点で未来を描き、一歩ずつ着実なステップを踏んでいくことを願います。

         
山田惇依氏
執筆者
山田惇依
株式会社エスネットワークス 経営支援第2事業本部 事業承継部  公認会計士、公認不正検査士、日本ファミリービジネスアドバイザー協会フェロー。 2010年、有限責任監査法人トーマツ入所。製造業を中心に会計監査、J-SOX導入支援に従事。 2015年9月、自身の承継問題を機に退職。以来、事業承継を経営の承継、株式の承継、家族の承継の3つの切り口でとらえ、 同族企業向けに事業承継サービスを提供。事業と家族の永続性に焦点を当てた世界のコンサルティングツールの研究を行っている。
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